薬膳とは 〜基本からよく使われる素材まで〜

2022/10/25

◎薬膳とは

薬膳とは東洋医学の考え方を基に体質に合わせて食材の性質を考慮し、気血水これの巡りやバランスを整えることを言います。これを食事に応用したものが薬膳料理です。

目的は漢方と一緒です。医薬品の範囲で行えば漢方薬、食事の範囲で行えば薬膳となります。

また医食同源という言葉もあるのですが、これは「病気を治す食べ物というのは、薬と根源的に同じです」という発想です。

口から入れて体に効いて体調が変化する。そういう意味では食べ物であっても、良い食べ物を取れば健康になりますし、お薬もちゃんと体に合ったものを使えば病気を治しますので、結局は「医食同源です」ということなります。なお、実は、「医食同源」という単語は日本で作られた単語です。中国に薬食同源という思想があるのですが、日本ではそれの文字を変えて作られた言葉なので意味は一緒です。日頃の食事から体のバランスを整えることで病気を予防しますという考え方です。

 

◎漢方薬と民間薬の違いについて

次に漢方薬と民間薬の違いについても解説していきます。漢方薬というのは基本的に一個で使うことは、あまりないです。二つ以上の生薬を組み合わせて漢方薬というのが作られます。例えば葛根湯という有名な漢方薬は、7種類の生薬からできています。

また漢方薬と言うのは基本的に医学書に基づいてものです。

一方で民間薬というのは、一種類で使う場合がほとんどです。例えばドクダミ茶とか、エゾウコギ茶とか、そういうウラジロガシ茶とか、そういう一種類で使うもの民間薬と呼んでいます。

これはおばあちゃんの知恵みたいな言い方をした方がわかりやすいかもしれませんが、地域の伝承に基づくことが多いので、独自性が結構あります。この地域だと、例えば「頭痛の時に、この薬草を煎じて使うと良くるよ」などと、使い方が伝承的に伝わっているものが多いです。下記に、民間薬として、良く使われる素材を紹介してきます。

 

◎エゾウコギについて

エゾは、蝦夷を表し、実際、北海道で採取できます。寒い地域に存在している植物です。エゾウコギは、これは気血水で言うと気の巡りを整えストレスをケアしてくれる民間薬です。気の巡りを改善するので、熱の巡りも良くします。ストレス時代にはすごく良いと言われており、宇宙飛行士が宇宙に持っていって健康のために服用していたことで、大変有名になりました。日本では、上記の通り、気の巡りで有名ですが、他の国では強壮剤として使われるケースも多いです。精神的にも肉体的もプラスになるのがエゾウコギです。エゾウコギの詳細は、再度、薬膳素材で記述します。

 

◎目薬の木について

目薬の木は日本にしかない素材なのですが、目の健康に江戸時代から使われてきました。当時は煮た汁を目薬の木を煎じた汁を目薬みたいにして概要的に使っていたのですが、日本で今、目薬の木を使う時は煎じてそれをお茶として飲むということを中心に使っています。別名としては、千里眼、長者の木とも呼ばれています。お店に来ている方だと結構この目薬の木とか使ったことがある方はいると思います。今、スマホとかパソコンとか結構目を酷使している方が多いので、目薬が木を気になって使う方が多いです。

 

◎ウラジロガシについて

ウラジロガシは、別名排石茶とも言われています。まさに石を出すお茶です。腎結石、尿路結石とか、あと膀胱にできた結石などを排出するときに役立ちますので、排石茶という名前にもなっています。文献にも記述があり、当然といえば当然なのですが、石が小さい時の方が、排石される確率が高いというデータがあります。従ってお早めに飲んで頂いた方が大きくなってからより、小さい時の方が出してくれる率が高いということなります。気になる方は是非早めにこのウラジロガシを試してみることをお勧めします。

 

ここから薬膳素材ではよく使う、よく使える、そういう処方を紹介していきます。

 

◎朝鮮人参について

朝鮮人参は、生薬の王様と言われています。生薬だと「人参」と書いていますが、漢方でいわゆる人参と言ったら、この朝鮮人参のことを指しています。日常的に食べるスーパーに売っている人参と勘違いされる方もいらっしゃるのですが、植物的にも全然違います。

スーパーで売っているオレンジ色の人参はセリ科の植物です。一方で、朝鮮人参はウコギ科の植物です。別名オタネニンジンと呼んだり、高麗人参と呼ぶこともありますが、全部同じ朝鮮人参を指しており、呼び方が違うだけです。江戸時代の徳川家が種を配って日本で栽培を促したということで、オタネニンジンという名前が日本で生まれました。

 

また朝鮮人参の性質をまとめると、

朝鮮人参:補虚薬(補気薬)/温/甘・微苦/脾・肺

朝鮮人参は、「補虚薬」「補気薬」などに分類されますが、これは虚した体を補う、それから気血水の「気」これを補う薬ということで、元気をつける代表処方です。温というのは体を温めますという性質です。それから「甘」、「微苦」とありますが、これも薬膳的に考えた味の分類です。漢方の薬膳では味というのが、そもそも身体に働きかける影響力というのがあって、例えば「甘い味は体に栄養を残します」、「苦い味は解毒の効果や、余計な熱を捨てます」などの働きがあります。

また「脾」「肺」と書いてあるのですが、これは五臓六腑の脾と肺にまずは影響を与えやすいという意味です。五臓六腑の脾は消化吸収機能を指します、五臓六腑の肺は呼吸や自律神経の調整を行います。

そして、朝鮮人参の学術名は「パナックス・ジンセンダ」です。パナックスというのはギリシャ語で「全てを治療する万能薬」と意味になるのですが、朝鮮人参はやはりかなり強力な体を整える生薬になるので、万能的に使う、万能的に効くということで、こういう呼び名がついています。また漢方の教科書には、下記の効能が記載されています。

 

「五臓を補い精神を安らかにし、魂魄を定めている驚喜を止め、邪気を祓い、目を明らかにして心を開き、智を益す」

 

長く服用すれば身を軽くし寿命が伸びるという素晴らしい効能が記載されていますが、一つのポイントとなるのが、「五臓を補い」の部分です。上記のとおり、朝鮮人参の分類としては、「まずは脾と肺を補います」という話をしたのですが、実は朝鮮人参が漢方の王様と言われる理由は「五臓全てを補う」ことにあります。

 

ここでは、五臓の働きについては、簡単にだけ解説しますが、

 

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「肝」:血を貯蔵して、必要な場所に配分

「心」:ポンプ機能として血を巡らせる。熱代謝や精神活動にも関与

「脾」:胃腸の働きを調整して、消化吸収排泄を管理

「肺」:呼吸呼吸と自律神経に関与。皮膚の表面に栄養を届ける

「腎」:水分代謝に関わる「腎臓」とホルモンバランスに関わる「副腎」の働きなど

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この五臓全てに良いのが朝鮮人参なのです。

 

他の部分についても解説すると、精神を安らかにして、精神力を安定させる効果もあります。加えて、非常に興味深い疫学調査の結果があります。韓国の疫学調査で朝鮮人参を取ってないグループ、非接種グループと、人参を取っていたグループ、摂取していたグループで発癌リスクを調べました。その結果、人参を取ってないグループを1とした場合、人参を摂取していたグループでは胃癌になるリスク、それから肺癌になるリスクが0.33それから0.30に減少しました。したがって、朝鮮人参を服用し続けることで、がんになるリスクが1/3ぐらいに減っているという事です。これは「長く服用すれば身を軽くし寿命が伸びる」という記述の裏づけになると思います。

 

◎エゾウコギについて

エゾウコギについては、上記で解説しましたが、ここでは、さらに詳細を記述します。エゾウコギは、朝鮮人参と同じウコギ科の植物です。北海道に意味する「蝦夷」ここから来ています。寒い地方で採れると言われているので、北海道とかロシアの方で取れる薬膳素材なのです。エゾウコギはロシアでは命の根を意味する「エレウテロコック」と呼ばれています。宇宙飛行士が健康管理のため宇宙に持っていったことでも有名になりました。中国の薬物書で「本草綱目」というまた別の書物があるのですが、そこにも「精気を補い、筋骨を強壮し、意志を堅固にする」それから「長い間服用すれば体が軽快になり、老化を防ぐ」と書かれています。これもアンチエイジング作用として取っていた方が健康で長生きするような記載がされていますので「何か健康維持増進できるものはないですか」且つ「ストレスを軽減するものはないですか」と言われたら、このエゾウコギが非常に良いと思います。

効能として「精気を補い、筋骨を強壮し」と記載があるのですが、別に精神系を整えるだけではなくて、本当に体の滋養強壮力をつける、体を丈夫にするという働きもあるので、これはウコギ科の特徴と捉えて良いです。朝鮮人参の場合と同じく、エゾウコギも体を丈夫にする働きがありますので、アンチエイジングしたい方、体を丈夫に保ちたい方は、エゾウコギを使ってみるのも良さそうです。朝鮮人参の味はちょっと甘いのと、やや苦いという表現をしていたのですが、実際の味として人参は結構苦いです。独特の香りもしますし、苦味があります。一方でエゾウコギはそれほど、味のくせがなく、飲みやすいです。そのため、朝鮮人参よりは、好き嫌いは少ないと思われます。

 

◎棗(なつめ)について

は、クロウメモドキ科の棗の果実です。よく「デーツですよね」と言われるのですが、全く別物の植物です。たしかに棗とデーツというものは非常に形も色も似ています。さらに、デーツの別名が、「ナツメヤシ」であるため、非常に紛らわしいです。

棗については、「約3000年前から栽培され」という記述があるので、非常に歴史の長い、薬膳素材です。中国では日常的に食べられていて、ことわざにもなっています。

そのことわざは、「1日3個棗を食べると老いません」というものです。美容のため、アンチエイジングのために、日常的に食べられている健康素材といえます。また、漢方の処方にも棗は汎用されています。生薬としての名前は、大きい棗ということで、「大棗(たいそう)」と言うのですが、棗を使わない漢方医はいないと言われるぐらい、非常に多くの処方にも入っています。例えば、有名な葛根湯の中にも棗は、入っています。

また、効能としては、胃腸に良く、血を補います。実際、鉄分が多く含まれているので、女性にお勧めの薬膳素材です。

 

◎龍眼の実について

龍眼の実はムクロジ科の龍眼の種皮です。果実を半分に割ると真ん中に大きい黒い種が入っています。それが龍の目に見えることから龍眼の実と呼ばれるようになったと言われています。また、もともとは、薄い色の果実ですが、天日干しの熟成によって、茶〜黒色になっていきます。これは、天日干しするとメイラード反応と呼ばれる、糖とアミノ酸が反応する化学反応が起きるためです。そうすると色が黒くなって別の効能として生薬として薬膳素材として効能が増してくると言われています。

そのため、漢方ではこの黒くなった龍眼の実をメインに使っています。補血薬に分類されるものなので、血を補うということで、貧血の方とかホルモンバランスを整えたい方とか、あとは純粋に目が疲れやすい、髪の毛抜けやすいとか、爪が割れやすい、血液が足りないという方は龍眼が非常に良いと思います。味は甘めで食べやすく、プルーンに使いですそのまま食べても良いですし、お茶とか紅茶とかに入れてふやかして食べても良く、使いやすい薬膳素材です。

 

◎薬膳素材を使う上での注意点

今回のブログで紹介した薬膳素材は全て、食品として取り扱い可能ですので、普通にお店で薬膳料理として作って提供したいという場合も使えます。もちろん普段の食品として「何か健康に良いものないですか」と言った時も紹介できるものです。

ここで、注意しなくてはならないのは、薬膳素材の中には、医薬品としてしか提供できないものがあります。専門用語では、「専ら医薬品」と言うのですが、「専ら医薬品」に相当するものは、食品として扱うことができません。したがって、飲食店などで提供ができないので、注意が必要です。この「専ら医薬品」は、ネットで検索すれば、一覧が出てきます。もし、薬膳料理などを提供したいと考えている場合は、事前に調べて、確認することをお勧めします。

自分で調べることに不安がある場合は、お気軽にご相談ください。

 

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